幻想と論理の美しきハーモニー
★★★★★
■「言語と密室のコンポジション 他二編」
■「アリア系銀河鉄道」
宇佐見博士の旧友・鶴見未紀也が、何者かに毒殺される。毒薬である
×酸××ウムは、皮膚に接触することで鶴見の身体に吸収されていた
のだが、犯人が鶴見家のどこにそれを仕込んだのかは、不明だった。
そして、鶴見が毒殺されたのと同じ頃、鶴見家のそばにある刑務所
から、伝説的なハッカーの囚人が脱獄するという事件も起きていた。
宇佐見博士と鶴見の娘・マリアは、銀河鉄道に
乗り込み、二つの事件の関連を検討するのだが……。
脱獄トリックはそれなりに面白いのですが、毒薬の仕込み場所はお粗末。
いくら毒薬を検出するための薬が高価といっても、
さすがに警察もそこは調べるんじゃないでしょうかw
とはいえ、本作の主眼は事件それ自体にはなく、あくまで
ファンタジイ的手法によるアクロバティックな解決にあるの
ですから、ごちゃごちゃ言うのは野暮でしょうね。
■「アリスのドア 〜Bonus Track〜」
大きな石材で造られた部屋で目覚めた宇佐見博士。そこには、二本足で立つ
白いウサギがおり、彼は宇佐見博士に「この部屋から出なければ、どこへも
行けませんよ」と告げた。
その部屋には、高さ三十センチほどのドアが四つ、菱形に設けられており、
部屋に用意された大きさの異なる三組の鍵と、液体の入った二種類の瓶
を使って、“出口”を見出すのだと思われるが……。
『不思議の国のアリス』をモチーフにした、ファンタジイ的な道具立てを
用いながら、実はきっちり割り切れるパズラーであるという見事な小品。