すごいの一言
★★★★★
裁判員制度が始まって一年以上、それを踏まえた作品は色々あったが
これだけ司法制度改革の中核に踏み込んだ作品はなかった。
裁判員制度は司法制度改革の一部にすぎないのにそればかりが言われ、
法テラスや弁護士増員問題などについてはあまり知られていない。
この作品はそれら重要だがマイナーな部分にしっかり切り込んでいる。
そしてすごいのは難解な問題を面白いミステリーにしてしまうところだ。
高い筆力で最後まで飽きさせず、しかも立派に本格ミステリーでもある。
キャラクター造詣も見事。落ちこぼれ判事やトップエリート判事などが
時に人間くさく、時に恰好よく描かれている。すごいの一言だ。
これまでの二作は似たところがあったが、この作品は趣が少し違う。
男性的な感じがした。(あまりいい表現ではないかもしれないが)
構成力が極めて高く、純粋本格や他のものもいろいろ書けるのだろうが、
願わくばこういう骨太の路線で大きく羽ばたいてほしい。