アメリカの愛国心の源流
★★★★☆
ボドナーが本書で明らかにしようとしたことは、○○100周年のような
記念祝賀行事を検証して、アメリカ人の愛国心がどのようなプロセスを
経て形成されていったのか、ということだ
数多くの事例の検証の中で、著者はある一定の結論を見つけている。
それは、多くの記念祝賀行事において、方法をめぐる競合が起きているということである
連邦政府レベルvs地方 政府レベルvs民間 マジョリティvsマイノリティ
このような構図が多くの事例で見られた。
これは、それぞれのレベルにおける記憶の保持の仕方が異なることからくるものだと考えられる
その中でボドナーが特に主張したいことは、愛国心を鼓吹したがる政府レベル
に対抗する民間レベルのベクトルの強さだ。
ここから見て取れることは、あくまでボドナーのアメリカという国への信頼だ。
愛国心という隘路に陥ることなく、対立の中から新しい価値観を生み出していくという、
アメリカへの信頼である。
その主張に全面的に賛成することはできないが、言わんとすることはわかる。
上から叩き込まれるような愛国心のみでは、国は偏狭なナショナリズムに
閉じこもることになる。ボドナーの主張はそれに対する警告なのだ
アメリカがいまだ健全であるかどうかは、読者諸兄の判断であろうが。