スタートを告げるのは、バリー・マニロウの「Mandy」の胸躍るヴァージョン。ウエストライフのキャリア中、ベストを争える曲だ。いつもの感傷的なウエストライフ流バラードとは一線を画しているのが勝因だろう。彼らがこの数年飽きもせずに量産してきたばからしくもお涙頂戴的なチューンにはなかった魅力がある。続く「Hey Whatever」も新味という点では負けていない。シングル曲としてはリスキーだが、まずまずの成果と言える。かなり意外で興味深いトラックだ。その後、「Obvious」と「Heal」という思わせぶりなタイトルを持つ2曲で、彼らはパッとしない世界に逆戻りしてしまう。2曲ともポップとしては水準以下であり、シニード・クインあたりはもっとマシな曲を書いてもらっているのにと思わずにはいられない。
「Thank You」はこのアルバム中の白眉だ(場違いなスクラッチはいただけないが)。ボン・ジョヴィと佳曲「World of Our Own」のあいのこのような作風は、ウエストライフの抱える根本的なパラドックスを示してもいる。バラードから離れているときの彼らは素晴らしいポップ・グループになり得る。ところが、バラードっぽい曲(おおむねよく書けているのだが)を歌うと正反対の結果を招いてしまう。ウエストライフをトップに押し上げた必殺技が、今や足かせとなっているのだ。今回、彼らは何度目かの状況打破を試みたわけだが、まだ小手調べに終わっている感じがする。いま1度のチャレンジを期待したいところだ。(Cortman Virtue, Amazon.co.uk)