だが本作を理解する鍵はメロディーにある。マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン式の分厚いヴォーカル・ハーモニーとかき鳴らされる大海のように深いベースラインによる人魚の子守唄「The Lithin Stiffs」から、疾走する「Salt the Skies」――エネルギッシュなライヴ・サウンドのファウスト風クラウトロックに忠誠を誓っている――までメロディーが全曲を決定づけているのだ。ポスト・ロックのスターたちが消えてしまったように、トータスももはやかつてのような驚くほど独創的な音は鳴らしていない。けれども本作でトータスは長所をいかし、知的な組みたてから才気煥発なサウンドを作りあげている。本作を聴く前にはヘッドホンのほこりを払い、またあらためて驚かされることを覚悟しよう。(Louis Pattison, Amazon.co.uk)