ヘレン・フィールディングの2作目となるこのとびきり愉快な小説は、出版社に勤務する自意識過剰の30代女性が、休暇後、ストレスで悩んでいるところから始まる。彼女はなんとか内面の平和を確立し、落ち着きを取り戻そうと決心する。たとえば「朝目が覚めたら、すぐに起きる」つもりだし、母親のたくらみで行くハメになったつまらないパーティーを乗りきることさえできれば、よいスタートを切れたはずだったのだ。「気取った既婚者」が大勢集まって、ブリジットや仲間の「シングルトン」の心配をしているふりをするようなパーティー。彼女に言わせれば、「私たちは、やつらを取り囲んで、『結婚生活はどう? まだセックスしてる?』などとわめき立てたりはしない」のである。
このパーティーはほんの始まりだった。その年、実行能力不足にさいなまれ(これは仕事や遊びのときの話で、ベッドの中ではまあまあ)、他人の「情緒的あほう状態」にあらがって生きるうちに、ブリジットは恥ずかしいことをごまんと経験することになる。たとえば、ニットのアンサンブルを着る平凡な女だった母親が、突然テレビのトークショーの司会になり、あっけらかんと不倫をしているとか。一方、彼女自身は、1年の半分はシャルドネを飲みすぎて「悲惨なアル中」になった気分だ。
本書は、もともとロンドンのインデペンデント紙に連載され、性別、年齢を問わず読者の心の琴線を震わせたコラム。ヘレン・フィールディングの率直で繊細な筆致は、絶望や自己不信や被害妄想を明るく軽妙に描き、自己啓発本(しらふのブリジットには、酔っ払っているときの半分も実用的と思えない本)から「コスモポリタン式の風水」に至るまで、あらゆるものを手きびしく風刺している。フィールディングは1990年代のナンシー・ミットフォード(1900年代前半に活躍した女流作家)であり、魅力あふれるヒロイン、ブリジットには誰もがエールを送らずにはいられない。そしてまた誰もが、ブリジットがまたヘマをすることを期待し、その体験を続編でまた報告してほしいと願っていることも事実である。