個人主義幻想への解毒剤か
★★★★★
本書は十年前ほどに出版されて以来確実に版を重ねる名著のようです。原書の見た目に「すわ、ポップサイコロジーか!?」と警戒心を抱かなくはないのですが、大学の教科書として使用されたりと、真面目な本ですね。英語も意外に硬かったです。
社会心理学というのか行動心理学というのか、人間の根源的自己拡大欲求(他人に「影響力」を持ちたい、という欲求)を多面的に分析し、悪質な影響力実践者からいかに身を守るか、を示唆しています。突っ込み体質の方や性格が斜めの方には「目から鱗」というほどではないと思いますですが、改めて明記されると「ほう〜」となるような事柄が沢山書いてあります。いずれも身に覚えがある上に、不思議な社会現象を理解する上でも面白い本です。中国の「寛容政策」の一環としてのエッセイコンクールの記述など一読の価値ありです。「書く」という行為が自己呪縛的であると。「言霊」と言った古代の日本人は正しかったのだな、と感動。となると、朝日文化人とか岩波文化人とか日経文化人とか、あの人たちやこの人たちの「面妖な生態」にも納得が行くというものです。ペンは剣より強し、と言うが、ペンはそれを振るう人間をも「食う」らしいです。
読了して、個人主義やら自由意志やらは大多数の人間にとってはマボロシだよなぁ、と苦笑いすること請け合いです。これは役に立つ一冊ですね。