女性たちはかつてないほどの規模で世界各地を移動している。しかし、それは航空便を頻繁に利用するような女性幹部層だけのことではない。旅をしていても、そのことが一般に認識されていない、膨大な数の女性が存在する。毎年、何百万もの女性が先進国の家庭、託児所、売春宿などで働くためにメキシコ、スリランカ、フィリピン、その他の第3世界から旅立っているのだ。女性の伝統的な役割をめぐる労働の大規模な移動により奇妙なことが起こっている。新しい世界統計によると、富裕国に流入する女性労働力は貧困国からの出稼ぎであり、残された家族はその犠牲になっていることが多い。出稼ぎの子守、掃除婦、保母、給仕は富裕国の人手不足を緩和してくれるが、その一方で彼女たちの出身国で働き手が不足することになる。
ベトナム人の文通花嫁の運命からロサンゼルスのメキシコ人子守の流入や日本人売春宿へのタイ娘の売却まで広範囲な話題を取り上げながら、増大している大量移民や商取引によって形成されている世界をこれまでにない視角からとらえている。多方面の優れた執筆人による既発表の文章4本を含めた15本の力作評論を、ベストセラー作家のバーバラ・エーレンライクとアーリー・ホックシールドが収集・紹介したこの重要な評論集は、第3世界から搾り取られる主要資源がいまや金や銀ではなく愛であるという新らしい時代状況を示している。