著者は、動物行動学の権威日高敏隆の研究室で昆虫行動学を学んだ昆虫カメラマン。夕日を背景に、巨大な2本のツノのシルエットが印象的に浮かぶ南米のネプチューンオオカブトムシ。マレー半島に生息する世界最強のコーカサスオオカブトムシの決闘。白色のボディが輝くアメリカのグラントシロカブトムシ。400点あまりのカラー写真の数々は、カブトムシの迫力と美しさを伝える貴重なものばかりだ。
また、写真だけではなく、フィールドワークに裏打ちされた著者の解説文も楽しい。タイ北部で行われている「メンクワン」と呼ばれるヒメカブトムシの相撲のリポートやヘルクレスオオカブトムシの採集の様子など、カブトムシたちとの出あいの際の驚きや感動をそのままに、まるで紀行文を読むような臨場感あふれるものとなっている。世界のカブトムシを訪ね歩くバーチャルな旅も楽しめそうだ。(中島正敏)