近世日本の庶民は、混浴の銭湯に平気で入り、裸体を恥じなかったと、日本を訪れた西洋人らの記述から生まれた俗論が跋扈しているが、本書では、川柳を資料として、男たちが混浴でそれなりに興奮していたこと、娘たちがそれなりに恥じていたことを明らかにする。そして読物としても優れている。日本人は性に対して無感覚だった、の類の俗説を、穏やかに退ける好著である。小谷野敦