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烈士の誕生―韓国の民衆運動における「恨」の力学

価格: ¥4,860
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平河出版社
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事例の興味深さ ★★★★★
出版から10年、ということは研究自体は十数年前に進められたものである。

それ自体はなんら問題となるものではないが、いま読み返してみると、この本が取り上げている1970年代・1980年代はともかくとして、「現在」としての1990年代が、韓国においていかに今は昔と遠ざかってしまっているか、がひしひしと実感できる。「烈士」の最初のモデルとなった全泰壹、最終的には焼身自殺にまで至ったそのライフヒストリーに共感できる環境は、今の韓国にはもはやない。

(彼が劣悪な環境で働いていた平和市場前を流れる現在の清渓川の透明な水を、当時の誰が想像できただろうか。)

開発独裁・軍事独裁体制下において生み出された非業の死者をめぐる生と死とのダイナミズムに注目するこの研究は、近代における死についてもそもそと考えている評者にとっては、興味深いものである。豊富な資料とインタビューによって構成される「烈士」という事例そのものが、本書にとどまらぬインプリケーションを感じされる。

ただ、敢えて言うならば、それに比して理論的検討を加えているあたりの記述には不満が残る。著者自身が社会学もしくは文化人類学の研究者としてのアイデンティティを持っているのは分かるのだが、どうにも取ってつけたような印象が拭えない。ここで、デュルケムやターナーを借りてきてこんな風に振り回す前に、もう少し他にやることがあったのではなかろうか…?

(「あとがき」を読んでもこうした点についての言及がなかったので、余計に気になった。)