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Twenty Years' Crisis, 1919-1939: An Introduction to the Studyof International Relations

価格: ¥1,958
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Harper Perennial
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国際関係を捉える上での基軸となる書 ★★★★★
 当時、外交を中心として漠然と扱われていた国際関係を、International Relations Theory という形の学問領域にまで発展させたことで名高い書です。カー自身はあまり望んでいなかったようですが、コックスの解説にもあるように、今日においては彼のソヴィエト史家という側面よりも、この書に代表されるような国際関係における存在感が日に日に増しています。

 本書においては、学者と政治家、モラルと権力、司法的解決と政治的解決などの要素がrealismとutopianismという対立軸で括られ、それをもとに当時の国際連盟や宥和政策などの様々な取り組みが批判的に検討されます。カーが古典的リアリズムの始祖と位置づけられていることからもわかるように、国際的に統一的な善やモラルの基準求める努力は20世紀においては偽善的なものに成り下がっているとして糾弾され、力に裏打ちされていないutopianismの内容の空疎さが強く訴えられています。しかし、我々は当時の国際関係論がウィルソン主義に代表されるような過度に理想主義的なものになっていることに対する彼の反動を考慮すべきであって、カー自身は剥き出しの権力には本来的に反抗するものであるという人間観を示しています。そして、力を実体的な場面におけるエッセンシャルな要素としながらも、指針となるべきモラルや普遍的道義性、あるいはそれらと権力との相互作用の必要性を認めています。そして最終章で示されるカーの国際秩序に関する今後の展望は時に理想主義的ですらあります。そこにカーという人物の奥深さ、両義性を見てとることができると思います。

 この本は実際の政治的背景に即して書かれているので、当時のカーの危機意識が伝わってくると共に、当時の世界情勢を欧米列強の知識人や政治家たちがどう認識していたかについての記述が垣間見られ興味深いです。外交官としての彼の経験があったからこその記述でしょう。
1919〜1939年までの国際関係 ★★★★★
詳細は、他のレビュアーさん達の方が詳しいので、もう何も言う事はありません。私は元々国際関係学については門外漢ですし、一般教養レベルでなぞった程度のお馬鹿なので。
ただ、文章は非常に読みやすいです、国際関係学や政治学に関する単語をある程度、頭の中に叩き込んでいたならば、後は洋書の小説等の様に目新しい単語が沢山出てくる確立がかなり低いので、読解の速い人なら直ぐに読めると思います。
1919〜1939時代の国際関係が単純明快に解り易く書かれて良い本だと思います。
賛否両論の書籍 ★★★★★
 国際政治学における古典中の古典である『危機の20年』を、イギリスの著名な国際政治学者M・コックスの序文付きで再販したものが同書である。内容は46年に出版された「第2版」に基づいている。39年に出版された「第1版」に基づいて同書を訳してくれたならば、「削除・変更された箇所」も含め、カーの認識した「リアルな戦間期の危機」を理解できた筈なので、それが若干残念ではある(後年、彼が認めた様に『危機の20年』は、戦間期の時代背景に強く影響されて書かれている)。

 古典の再販のため、既に同書を改めて買う必要は無いのかも知れない。しかし、コックスの「序文」を読むだけでも買う価値はある。なぜなら彼は、00年前後までの研究史、そしてイギリス・バーミンガム大学所蔵の「E・H・カー文書」を用いることによって、国際政治学におけるカーの評価の「知的漂流」を丁寧に描いているからである。加えて、日本においては一般にあまりなじみのない第2版での彼による「自己検閲」を、コックスが改めて取り上げているのも興味深い。

 しかし、我々はどうしてこうもE・H・カーに惹かれるのだろうか。実に多くの研究者達が、カーを分析の対象としている。39年〜40年にかけての「理想主義者」達、40年代から50年代にかけてのモーゲンソーやトンプソン、50年代〜60年代にかけての「英国学派」、それぞれの立場に基づいた幾分厳しいカーに対する批判、80年代から90年代、そして現在においてもおこなわれている「非リアリスト」的側面の再評価、そして、本書が出版された00年前後に頂点を迎える「カー・リヴァイアル」。これらが示すことは、国際政治学の分野から、何時の時代においても彼と同書が忘れられなかったという事実だろう。

 約70年という歴史の厳しい試練に耐え、今でも我々の興味を惹く『危機の20年』。国際政治学を勉強する1人の学徒として、いつまでも同書から学び、同書を模範とし、そして同書を批判的に捉えていきたいものである。
物事を見る態度 ★★★★★
本書は一般に国際関係論におけるリアリズムの始祖に位置づけられているようですが、実際に読んで見るとそうしたラベルがあまりしっくりこないと感じるのはおそらくレヴュアーだけではないと思います。近年カーの再評価が進められている(評伝としてJonathan Haslam, "Vices of Integrity: E.H.Carr 1892-1982"、研究書としてCharles Jones, "E.H.Carr and Interantional Relations: A Duty to Lie"、Michael Cox, "E.H.Carr: A Critical Reappraisal"など)のは、この脱歴史化された書を再び自由な視点からの解釈へと返そうということかと思います。

しかし、そうした研究動向やその評価の如何は別としても、同じくカーの『歴史とは何か』と並んで、本書は、国際政治や歴史に関してどうこうという以上に、社会的な物事一般に関する批判的精神の一つの在り方に触れることのできる名著でしょう。

なお、この新版ではMichael Coxによる序文がつけ加えられていて、それがなかなか長く質的にも良いものですので、既に旧版・翻訳を読まれた方も、この序文のためだけに改めて新版を購入して無駄ということはないかと思います。