超資本主義?民主主義への激励
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次期大統領Obama氏のTEABメンバーにもなった元労働省長官Robert Reich氏による資本主義経済の洞察(超資本主義の歩み)と民主主義への叱咤激励とでも言う内容です。1970年代から技術、社会制度の発展を契機に資本主義の下において企業は顧客と株主を満足させることに大いに成功している。一方、市民としての関心事、経済的保障、社会的公平、共同体、環境問題などは悪化の一途を辿っている。然しながら著者は企業に「良き企業市民」になることを期待しない。企業は顧客満足を通して株主利益を追求するための器であり、経営者はそれを全うすべき。経営者がその立場を利用し顧客・株主利益を犠牲にしてまで政治や市民活動を行えば背任行為ですらある。社会問題の悪化は現在のルールに則った企業活動の必然的な結果であり、民主主義のプロセスを通してルールの再検討の必要性を訴える。企業がロービー活動や献金を通して政治に介入している事態を憂う下りや、企業の(法)人格を否定し法人所得税の撤廃を訴えるあたりなどは日本人にはあまりピンとこないかもしれない。が、顧客と株主に大きな利益をもたらした資本主義市場経済と、市民としての利益が共存するための仕組みを考える良い切っ掛けになるのではと思います。