本書で主に焦点をあてているのは、メンバーの生い立ちから頂点を極める1970年代まで。メンバーの子供時代の素行や学校での生活、そして音楽に目覚め活動を開始するまでの、当事者でなければ知り得ない情報が次々と明らかにされていく。そしてドサ回りに近いツアーから、一気に世界的なスターに駆け上るまでのデタラメともいえるサクセスストーリー、中心メンバーであるブライアン・ジョーンズの死やオルタモントの悲劇、そして、それらすべてを乗り越え、続いていくバンド。その時々のメンバーの真意や葛藤、そして同時代の人間の視線が幾重にも折り重なり、深い陰影を刻んでいる。
半世紀以上にわたる彼らの活動と同時に、当時の時代背景や音楽シーンについても貴重な情報を与えてくれる。また、ツアーのセットリストや当時のレコード評もファンにはうれしいところだろう。日本で言うところの還暦を過ぎてもなお、最前線のミュージシャンであり続ける彼らの半生記は、多くのファンにとって宝物となるだろう。(大脇太一)