束の間のささやかな楽しみ
★★★☆☆
眠る前に寝床で横になって本を読むのが何よりの楽しみ。そういう人は多いと思うし、本書はそういう楽しみにピッタリであると思う。12の短編はいずれもイギリス一般人のありふれた日常を描いたものであるが、そこにはこの著者ならではの人間観察眼と、それを読者に楽しく聞かせてくれる、温かい語り口がつまっている。
高校の英語の教科書にこんな物語があったら(難易度もほどよい)、受験勉強ももっと楽しいものであったであろうに、などど思ってしまう。 第二編冒頭で、「Women are naturally superior to men,・・・」とあるが、この文言こそ、当短編集、いや恐らく彼の全作品に一貫する観察眼の一つなのであろう。
12編ともそれぞれ愉快であるが、特に最終編の、結末が四通りある男女の出会いの物語は秀逸だ。一通り目の結末は、「ま、こんなものだろう。」 二,三通り目は、「これじゃ男が可哀相過ぎる。」 でも四通り目は「良かったね」で、ほのぼの気分で眠られる。