ピアソラブームが追い風になったとはいえ、小松亮太の成功は彼のタンゴ観の広さによるものだ。古いタンゴから新しいタンゴまで、1台のバンドネオンから9重奏団まで、そして純アコースティックからコンピューターによる打ち込みサウンドとの共演まで、小松はタンゴという音楽が持つ表現の幅を最大限に利用してきた。その成果を1枚にまとめたのがこのベスト・アルバムだ。
さながらタンゴ・サウンドの見本帳とでもいったところ。注目したいのは初出音源の「愛は私達より強く」。バンドネオンのソロで演奏されるこの曲は、映画「男と女」の挿入曲をアレンジしたもの。フランシス・レイの小粋なメロディーに粘り気のあるエモーショナルな力が吹き込まれ、聴きごたえのある作品になっている。(松本泰樹)