本書では第一印象から始まって、ある時は絵に近寄り、ある時は遠ざかり、背景の隅に着目したりと視点をいろいろ変えながら作品を眺めさせてくれる。さらに趣味のカメラや写真と比べたり、路上観察の視点から論じたり、自らが絵を描く場合の気持ちを説明したりと、非常に広い視点で読み解いていく。その過程で画家や時代背景の説明、技術論もさりげなく織り込まれている。
本書全体には芸術に対する著者の哲学が貫かれている。淡々とした文体と、決してべた褒めしない内容とで爽やかな読後感をも感じさせる。
続編とも言うべき「名画読本 日本画編」もお薦め。