細胞や細胞器官の進化の歴史や機構に関して分子生物学的に今どこまで分かっているのかというレビューとしてもよくできているほか、一つの発見がまた次の疑問を生み、新しい発見のためには観察に最も適した試料の選択、実験手桊??の開拓、ちょっとした変化を見逃さないことが大切であることなど、実験科学がどのように発展していくかの実例も多くて勉強になる。著者自身も優れた業績を出し続けている生物学者なので解説も明確かつ正確である。
ミトコンドリアDNA解析の人類学への応用といった内容は最後に軽く触れられている程度である。もしそちらの分野のほうに興味のある方は他書を選択されたほうがよいと思う。