日本版フィールド・オブ・ドリーム
★★★★☆
熊本在住のSF作家・梶尾真治の最新長編。天草地方の壱里島(いちりじま)という架空の離島で起こった不思議な物語である。
SFというと昔話をひっくり返した未来話というイメージがあるが、この物語は現代のどこにでもありそうな地方の離島が舞台となっている。物語としてはフィールド・オブ・ドリームの日本版と言うべきか。日本のどこにでもありそうな離島で起こった危機を主人公を取り巻く魑魅魍魎たちが救うという点において、そして強烈な懐かしさを伴うという点において。
島の人情の描き方といい、細部の料理の描写といい、著者の現実を描く力は確かである。その上にSFの想像力を載せるのが著者の特色である。
父親が熊本出身で家の墓も熊本市の郊外にあるという個人的な事情もあって、当分、この著者の描く熊本を中心とした物語から目が離せそうもない。