大戦間のイギリス。エディンバラの私立学校の女教師と少女たちの日々を描いている。
戦争で恋人を亡くした女教師は、自分の人生で「最良の時」を教育に捧げると自負し、彼女たちを「一流中の一流」に育てようとする。
「教育は与えることではなく、引き出すことだ」という信念は印象的だ。しかし、常に愛と正義を求めようとする姿は、誇り高く純粋でもあるが、同時に自己中心的で自信過剰ともなり、独善的に周りの人たちを支配しようとする。
ついにはファシズムへと走り、愛し信頼していた生徒にも裏切られ、破綻を迎える。
彼女自身の愛の行方も屈折していて、共感しがたい。
現在と過去が錯綜しながら描かれる世界は、複雑な光と影をないまぜて、読む者に深い情感を与えるが、不可解さも残る。
１９３０年代のエディンバラの美しい自然の描写や、同時に暗く重苦しい歴史や社会の断層も描かれて、興味深い。

誰かを自らの思うとうりにコントロールしてみたい、又はすでにしている。と、思っているひとに是非、読んでもらいたい本です。 本当にそういうことは可能なんでしょうか？ それともそう思っているのは己のうぬぼれから？

最初の方の章はあまりに淡々として、繰り返される回想につかれるかもしれませんが、最後の方で明かされる人間のエゴとナルシズムには驚かれること間違いなしでしょう。