ホロコーストを通じて描かれた人間の本質と運命
★★★★★
ホロコーストの体験を通じて人間の本質と運命を描いた、衝撃的な作品である。
少年エリは父親と共にアウシュビッツへ送られる。生死のぎりぎりの中で二人は力を合わせて生き延びようとする。やがて父親は心身共に弱っていき、エリの重荷になっていく。看守に泣いて水を求めて叩かれたりする。そのようなことをしても無駄だということが父親にはわからなくなってしまったのだ。エリは、必死で父を励ましながら、このままでは二人とも死んでしまうという焦りを持つ。そして、朝に目覚めたエリは父親がいないことに気づく。寝ている間に父親は連れ去られたのだった。エリは、涙がでないことに良心の呵責を感じる。もう何も感じないようになっていた。しかし心の中を本当に見つめたら...
英語では次のようになっている。
"But I had no more tears. And, in the depths of my being, in the recesses of my weakened conscience, could I have searched it, I might perhaps have found something like-free at last!"
他にも衝撃的な場面がある。二人の囚人と一人の少年が処刑されることになった。この少年は皆に愛され、天使のような顔を持っていた。
三人が吊るされたとき、二人の大人は直ぐに死んだが、体重の軽い少年は半時間以上も苦しみもがきながらも、生きていた。それを囚人たちは見続けていた。
エリの後ろにいる男がつぶやいた。「神はどこにおられるのか」。エリの心の中で声が聞こえた。「どこにおられるか?ここだ。ここで神は絞首台に吊るされている」。
あっという間に読み終わりました
★★★★☆
この本は作者が実際にホロコーストで体験したことが書いてあります。
初めは神を信じていた彼が、ホロコーストでたくさんのユダヤ人が殺されていくのを見て、だんだん神の存在を疑っていくのが印象的でした。
子供と離れ離れになり幻覚を見るようになった女性、一つのパンのためにお互いを殺しあうユダヤ人達、全てが実話なのに、あまりに自分のいる世界と違いすぎて共感できませんでした。しかし、ホロコーストは確かに起こったのです。この本が語るように、かつて大勢のユダヤ人が大虐殺されたのです。もう二度と同じことが繰り返されないように、彼らの死が無駄にならないように、この本をぜひ読んでみてください。ホロコーストのことを知らない人も、知っている人も、読めば戦争が引き起こす酷い世界のことを少しは理解できると思います。