地球温暖化入門
★★★★☆
シリーズの題名通り、僅か150ページ足らずのコンパクトな分量で、地球温暖化の定義、学説史、気候変動に関する実証的な根拠、気候変動が生態系や経済に及ぼし得る影響、これに関する国際政治、緩和策や適応策等が簡潔に論じられている。本書は2004年に出版され、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第三次評価報告書(2001年)に言及しつつ書かれているので、その後の様々な展開(イギリス政府のStern報告書やIPCCの第四次評価報告書公表、IPCCとAl Goreのノーベル平和賞受賞、数多くの国際会議等)は反映されていないのだろうし、それがどの程度本書の入門書としての価値を減じるのかは分からないが、地球温暖化が益々政治問題化している中で、基本的な論点を知るという意味では非常に便利な本だと思った。本書は、人為起源による地球温暖化を認め、これを問題視する科学者の視点で書かれてはいるものの、懐疑的見解も紹介されていて、懐疑論の中で有効な論点と再反論できる論点が書かれているので、何が分かっていて何が分かっていないのかをバランス良く理解することができる。著者は、省エネや再生可能エネルギー等の緩和策を推進しつつ、最悪の事態に備えて適応策に巨額の投資が必要となることを説き、地球規模で長期的な視野からの取組みが必要と主張する。
本書の中で、文化理論に基づいた自然観や人間の本姓観を扱っている第3章が特に興味深かった。自然がどのような形で均衡するか、人の本姓をどう観るかを、グリッド(意思決定がルールにより制約される度合)とグループ(意思決定が集団により制約される度合)の強弱によって分類し、地球温暖化に対するアプローチを@ヒエラルキー(例:多くの人)、A個人主義(例:Bush大統領)、B平等主義(例:環境NGO)、C宿命論(例:開発途上国の綿花栽培者)の四象限として類型化しているあたりが面白い。