エーリッヒ・フォン・シュロトハイムは、ジャン・ルノワール『大いなる幻影』で捕虜収容所の司令官を演じた俳優として初めて出会った。ビリー・ワイルダー『サンセット大通り』では、かつての大女優グロリア・スワンソンのお抱え運転手を演じ、虚構の撮影を引きうけるシュトロハイムこそ、サイレント時代の監督であることを彷彿させ圧倒されたわけだが、彼の監督作品は完璧に再現された状態で今日観ることは不可能である。
今回紀伊国屋書店から「クリティカル・エディション」シリーズとして、現在望み得る最高の形で復元された『愚かなる妻』は、シュトロハイムがいかにアメリカ的価値を批判的に捉えていたかを知る上で、貴重なDVDとなっている。
今後、『クイーン・ケリー』や『アルプス颪』が発売予定であるらしいが、本作は某社から発売されている祖雑なプリントではない復元された『グリード』を観てみたいと思わせる品質である。『愚かなる妻』は、シュトロハイムを知る上で、必見の作品であると言っても過言ではない。また、シュトロハイムの生涯を一望する"The man you loved to hate"が付録として二枚組セットになっているので、資料的にも優れている待望の商品である。