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あるいは脳の内に棲む僕の彼女

価格: ¥1,031
カテゴリ: 単行本
ブランド: 角川春樹事務所
Amazon.co.jpで確認
一見ライトノベル風。でも実はなかなか面白いAIモノ ★★★★☆
萌え系な表紙に騙されてはいけない。一見、ライトノベル風に見えるけど、中身はなかなか本格的なAIもののSF小説。
それもそのはず、この小説は第9回小松左京賞最終候補作ということ。
美しい容姿、肢体をした人型人工知能との恋愛じみた話や陵辱シーンなど、それなりのお楽しみのシーンもあるんだけど、あまりにも安直な展開だと思ってたら、最後の展開はちょっと驚いた。あれがなければ、ただ単に嗜虐趣味な小説だけど、感心した。

それと人工知能と人間の脳を擬体に移植する設定をうまく絡めて、面白い結末につなげている。ラストまでの展開はちょっと強引かもしれないけど、理解できる。

ここのところ、AIものを読む機会が多い気がする。もともと好きなジャンルなので不思議はないんだけど、それにしてもAIモノが目に付く。偶然かな、それとも、今、AIは来てるのかな。

新人ということで、次作も期待。
もったいない ★★★★☆
CARNELIANさんの美麗表紙(挿絵無し)、あらすじに書かれた
人型AIの文字に惹かれて買いました。
厚さも値段も張るものですが、それだけの価値はあるように思います。
表紙が美少女で、主人公がオタクということもあり、
恐らく設定だけ見るとライトノベルのように思えますが、
中身はかなり専門用語が飛び交うハードカバーです。
けれど描写は丁寧でかつ繊細。予想を裏切る展開。
そして何よりテンポがいいので、時間を忘れて読んでしまいました。

本書の最後に「大幅な加筆、修正をしたもの」とあるのが気になりますが、
もっと加筆して欲しかったです。
後半までは謎が謎を呼ぶ息も詰まる展開にハラハラさせられますが、
終盤、本当に急展開します。一瞬、この部分は夢落ちではないかと思うほどに。
その後も最後の真相が語られる場面では婉曲的な表現が多く、
真相が語られたのに、作者の語る真相と自分が読んで想像した真相が
一致するのか不安になり、すっきりしません。
元のボリュームがわかりませんが、本書のページ数まで加筆するなら、
いっそ上下巻にわけてでも、終盤の加筆をして欲しかったです。
作品としてはかなり完成度も高いですが、読んだ後味がすっきりしないので
今後の期待を込めて☆四つとさせていただきました。
アンバランスで過剰、だがそれがいい ★★★★★
小松左京賞は予定調和に収まらない面白い作家・作品を生みだすようです。特に最終選考まで残り受賞に至らなかった作品に、ですが。故・伊藤計劃の『虐殺器官』しかり、この松本晶の『あるいは脳の内に…』しかり。賞自体が現在中断している?のが残念としか言いようがありません。そしてこの物語、表紙絵の甘さと本の分厚さがまずバランスを欠いています。さらに読み始めると、どこに着地するのか分からない危うさに最初は戸惑います。ハードSFなのか、『鋼鉄都市』的なミステリーなのか、ベタなラノベなのか、エロゲのシナリオなのか、ケータイ恋愛小説なのか、はたまた夢枕獏や東浩紀狙いなのか。複雑で過剰な混淆は、フレンチのロブションさんのどっしりとした肉料理、それも甘い蜂蜜入りのソースを添えた逸品を彷彿とさせます。なのに物語の後半はいつの間にかその世界に引き込まれ、長くて敵わねえなぁと思ったページ数も一気呵成に読んでしまいました。決して軽く流せる文体ではありません。デビュー作とのことで、スタイルもまだ確立していないのでしょう。ですけれど、腹にズシリと応えるモノを探している人には、一読の価値はあると思います。御値段が張るのが玉に瑕ですけれどね。
予想していたものとかなり違う ★★★☆☆
表紙に書かれている少女。この絵に惹かれて、ライトノベルを買うようなつもりで買ってしまいました。
結論から言うと、しっかりとハードカバーです。ライトノベルではありませんでした。
ですが、書き方は割とマイルドであり、読み易い作品であるとは思います。

題材とされているAIと聞いて何を思い浮かべるでしょうか? 私はパソコン上(あるいは架空の新しいデバイス)で動作する、人工知能の事だと想像していました。
この作品の中でのAIの定義は、「限りなく人間に近づけた、人工知能を搭載するロボット」のような存在です。
ロボットといっても、実際には有機物で構成された生きている物です。
時代は今より約半世紀ほど後、今とはだいぶ違った世界の中で生きる「オタク」で「重病患者」である男性が主人公です。

読む前の予想と比べて、かなり内容が違っていてショックを受けましたが、テーマが悪いということではありません。
ただし、読む人を選ぶ作品かもしれません。実際に医療に携わっている方が書かれた作品のようで、医学に関する専門用語、等々が出てきます。
一般常識でも読むのに障害は無いと思いますが、疎い方には少し読みづらいかもしれませんね。

全体的に、人工生命体という架空のサイエンスに、作者自身の考察を加えたSFに分類されると思います。
テーマは一点絞りではなく、心身二元論、集合意識などの「意識」に関する様々な思想に飛び火しています。そのため、一回読んだだけではうまく理解出来ないかもしれません。
またストーリーは、導入などの前半部は良かったのですが、後半より荒削りな部分が目立ちました。そのような理由から、3☆とさせていただきました。

しかし、深く練りこまれた世界観。テーマなどは、新人とは思えないほどの素晴らしさです。
荒削りな部分も目立ちますが、普通に人に勧められるレベルだと私は思います。

文章力がなく、稚拙なレビューとなってしまいましたが、少しでも本の内容がわかれば幸いですね