ここ10年で劇的に進んだ機械学習の実用化の裏には、基礎的なアルゴリズムやテクニックに関する数々の重要な発展がある。例えば、限られた専門家のものだったベイズ手法はいまや主流となり、確率論的技術を説明し、応用するための一般的な枠組みとして、数々のグラフィックモデルが登場している。ベイズ手法の実用可能性は、変分ベイズや期待伝播といった幅広い近似的推論の発展によりおおいに高まり、カーネルに基づく新しいモデルは、アルゴリズムと応用に大きな影響を与えている。このまったく新しいテキストは、そうした最近の発展を考察しながら、パターン認識と機械学習という分野を総合的に紹介している。本書の対象となるのは、上級の大学生、博士課程1年目の学生、研究者、実務に携わる人など。パターン認識や機械学習に関する概念の予備知識は必要ない。ただし、多変量解析や基本的な線形代数を熟知していることが求められる。また、確率に関する経験があれば理解に役立つが、確率論の基本は本書でも簡単に説明されているので、絶対に必要というわけではない。機械学習、統計、コンピュータ科学、信号処理、コンピュータビジョン、データマインニング、生物情報学などの講座のテキストとしても使える。講座を担当する指導者のために、難易度別にランク付けした400問以上の練習問題をはじめ、幅広い教材も用意されている。練習問題の解答例は、一部を本書のWebサイトから、それ以外は指導者の求めに応じて出版社から入手できる。追加教材も充実しており、読者はWebサイトで最新情報を自由に閲覧できる。近日発売の姉妹書では、パターン認識と機械学習の実用面を扱っており、主要アルゴリズムの無料ソフトウェア実行、データ例セット、デモンストレーションプログラムが盛り込まれている。クリストファー・ビショップは、マイクロソフトリサーチ・ケンブリッジのアシスタントディレクターで、エジンバラ大学でコンピュータ科学の教授も務めている。ケンブリッジのダーウィンカレッジの研究員でもあり、英国王立工学アカデミーの研究員にも先ごろ選出された。著書『Neural Networks for Pattern Recognition』はテキストとして広く採用されている。