インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

Recovering: A Journal

価格: ¥996
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: W W Norton & Co Inc
Amazon.co.jpで確認
人生の苦みが豊穣になるとき ★★★★★
 メイ・サートンは、1995年に亡くなったアメリカの作家で、小説や詩も書いているが、それ以上にファンが多いのが彼女の日記だ。

『ミセス・スティーヴンズは人魚の歌を聞く』という同性愛を扱った小説を発表したために、マスコミに袋叩きにあい、彼女は55歳まで、ほとんど著述では自立できなかった。ところが58歳のときに発表した『独り居の日記』が多くの読者を獲得し、その読者の熱意におされるように、次々と日記を発表する。現在では、亡くなる前の年である82歳のときの日記まで出版されている。
 この本は66歳から67歳までの一年間の日記で、乳ガンの手術を受けたために『回復まで』という書名がつけられている。

 日記は、数日前のクリスマスの日の苦い経験から書き始められる。その日、長年の友人でもあり、愛人でもあったジュディを老人ホームから自宅に迎えいれた。ところが、ジュディの痴呆がすすみ、もはや気持ちを通じ合わせることもできない。かつての、二人で過ごした楽しいクリスマスの追憶と、現実との落差のなかで、この苦痛から抜け出す唯一の方法は「それをじっくりと経験することだ」、と彼女は自分に言い聞かせる。

 人間には孤独が必要だ、と彼女は日記のなかでたびたび語る。ただしそれは、他人を拒絶しての孤独ではない。この本のなかにも、彼女をささえる多くの人びとや読者が登場する。人間にはかぎらない。メイン州の美しい自然や、四季の移ろい、飼い犬に猫、詩作や文章をつづるという文学的営為・・こうしたことすべてが、彼女の経験を深めるもとになっている。感情をぶちまけるようにして書かれた日記に、どこか毅然とした品格がただよっているのは、たぶん、孤独と向き合う彼女に、ごまかしがないためだろう。

 ペーパーバックも簡単に手に入るので、英語に自信のある人はそちらで読んでみるのもいいと思う。アメリカのサイトで検索すれば、詩を朗読しているありし日の彼女の声を聞くこともできる。できたら82歳のときの日記を翻訳で読んでみたいと思うが、82歳の日記を人に読みたいと思わせることだけでも、じつに大したことではないか。