次の第2展示室に飾られた原書ジャケットのうち、私の目を一番引いたのは、G・K・チェスタトンの『詩人と狂人たち』英初版。大好きな巨匠のなかでもお気に入りの作品だから、こうして一頁にどーんと初版の装幀がカラーで掲載されていると、ほくほくしてしまう。作品集のあの短編からじゃなくて、その前の「黄色い鳥」の一場面を描いて欲しかったな……などと、あれこれ考えるのも楽しい。
また、頁の下のほうに森英俊さんのコメントが二行記されているんだけど、これも読んでいて実に楽しかった。博覧強記の知識に裏打ちされた的確なコメント。ジャケットと見比べながら、ふんふん、なーるほどお。ユーモラスなコメントもあったりして、くすりとさせられたりしながら頁をめくっていった。
ショートエッセイでは、山口雅也さんの「アームチェア探偵小説蒐集家」に、とりわけ心惹かれた。クリスチアナ・ブランドの『緑は危険』の米版原書を手にするまでの愉しみが記されている。氏が、「ええい、フェデックスでもなんでもいいやぃ、こちとら気が短ぇんだ。早いとこ送っちくれぃ!」とメール啖呵を切るところなんざ、実に爽快。敬愛するミステリ作家に対する熱い思い、ミステリ魂の心意気みたいなものを感じて嬉しくなった。
海外ミステリファンの方には、ぜひ一度手にとって、原書の英米初版のジャケットの数々をご覧になってみてください。きっと心わくわく躍りますよおと、本書をおすすめしたくなった次第です。