下巻を読み終えて本作の評価は、横山氏の持ち味を活かした良作、というものである。比叡による舵機故障中の大和曳航の試み、それに襲いかかる基地航空隊やエンタープライズの艦載機、日本側も現場部隊の総力を挙げて大和の護衛を図ると共に、ヘンダーソン飛行場の無力化による間接護衛も試みるが、米側はウィリス・リー指揮する新鋭戦艦二隻を大和撃沈の任務に送り出す。
舵機故障中の戦艦を撃沈しようと総力を挙げるというのは、ライン演習作戦におけるビスマルク追撃戦を思わせる状況であるが、今回はその相手が水上艦艇を始め、洋上航空戦力を持つ日本海軍であることがビスマルク追撃戦と大きく異なる。
互いにすり減った航空戦力から水上艦艇までをつぎ込んで行われた激烈な戦闘の経緯と、それに参加した指揮官から下士官、兵の動きまでが安定した筆致で描き出されている。
あっと驚くような新兵器も隠し球もなく、それぞれが限られた情報を元に目的を達成しようと死力を尽くす展開は、読んでいて燃えるものがある。
しかも、賭けられているのが大和というから、その味わいもまた格別である。
大和がどうなったかは、是非自分の目で確認して欲しい。
また、本人が後書きで前作、烈日の反響や今後の執筆活動の方針、抱負などを述べているので、横山氏の作品が気になる人は、そちらも要チェックである。