確率解析は数理ファイナンスで広く応用されていることから,あまり数学に詳しくない読者を対象とし,数学的側面を最小限におさえた解説書が,日本でも多く出版されている.しかし,確率解析を本格的に利用しようという際には,もっと深い理解が必要になってくる.本書は確率解析に関して,数学的に厳密な,しかし深入りはしない取り扱いをしており,必要にして十分な理解が得られる格好のテキストと言えるだろう.
本書を読む際には,確率変数列の大数法則,中心極限定理,特性関数,マルコフ性やマルチンゲールなど確率論の基礎的な事柄や,確率論独特の議論の仕方によく慣れていることが前提とされる.
なお,本書には和訳が出ている(渡辺寿夫訳,ブラウン運動と確率積分)
また,本書の著者らは,数理ファイナンスの入門書も出版している(Methods of Mathematical Finance).