歴史改変モノの傑作。亡くなったのが残念
★★★★☆
この本を読み始めたら、偶然にも著者の訃報に接した。この小説は、大分前に出版されたものを合本し、新装版としてでたもの。ホーガンの他の本は読んだことがあったが、この本は未読だった。
量子力学に基づいた時間旅行モノ。しかも、それを使って、第二次世界大戦に勝利したナチに支配された世界の歴史を変えようと、特殊部隊を過去に送り込むという歴史改変モノ。
こういう小説は、ものすごく好きなので、量子力学なんて難しいことはよく分からないけど、分厚い本にもかかわらず、とても楽しく読めた。アインシュタインが学生だったアイザック・アシモフの書いた小説を読んでヒントを得るなんていうちょっとしたエピソードもあって、SFファンとしてはうれしいところ。
ただ、歴史の描き方にちょっと不満。もちろん、ナチが悪役で、そのナチが平行世界ではロシアに原爆を落として、勝利するのを防ごうというのは分かるんだけど、じゃぁ、ヒロシマ、ナガサキはどうなんだ、そっちも防いでくれりゃいいじゃんか、って日本人の私は思う。世の中、そんな簡単に善悪は測れないものだろうけど、大量殺戮兵器を使った虐殺とナチが行った虐殺はどこが違うんだろう。独裁を防ぐためなら、許されるってことなの?
といった読み方は、おそらく私みたいなへそ曲がりの読み方。単純によく出来たSFサスペンス小説として読めばいいのかもしれないが...