結構難しいところも多々ありましたが、 総体的に見るととてもおもしろかったです。 感動あり、サスペンスありで楽しめる一冊だと思います。

この本は、神保町の三省堂の帰り、洋書のタトル商会に寄った時に、安売りの箱の中から見つけた。

今まで読んだ中で、一番文学的表現が多かったスパイ小説である。聖書、ギリシャ神話、その他の古典、故事からの引き合いが多かった。エンターテイメントの大衆的スパイ物小説としては、レベルの高い引用が多かった。英語の表現も持って回ったいい方、例えば、二重否定、仮定法が多く用いられ、難しい。対象の読者が、インテリレベルの高い人向けのように思われる。ただ、情景描写は細かく丁寧に書かれていて、出来事が目に浮かぶようになっている。

ストーリーは幾つかの出来事が平行で進み、チャプター毎に場所、時間が変わり、幅広いストーリーの大河小説である。登場人物が多く、アメリカ側とロシア側の攻防が多彩に描かれている。陸、海、空のルートを縦横に絡ませながら、お互いの攻め合いを書いたものであり、またその中でも、登場人物の人格付けがきちんとなされており、人間性を描くドラマにもなっている。それでいて、時間的には、金曜日午後５時５０分St. Petersburgで始まり、次の火曜日午後１０：００ヘルシンキで、実質的な攻防は終了しており、短い時間の間での多彩なストーリー展開には驚かされる。