著者は、記憶をたどって日記をよみがえらせ、それに基づいたジョン・レノン伝を書きはじめる。ここに描かれているジョンは、スーパースターでもなければ良き夫でもない。ヨーコの庇護のもとに部屋に引きこもり、他人に愛されたがってそれを得ることのない孤独な大金持ちだ。女性たちとのスキャンダラスな関係もジョンにとっては虚しいものでしかなかった。そしてジョンが頼ったものは、数秘術、夢判断、タロット占い、占星術などであった。
ここで著者の想像力は大いに飛躍する。ジョンが行ったと思われる占い、ジョンが見たであろう夢を想像し、いつしか著者の意識はジョンと一体となり、事実と想像の区別がつかないものになっている。その意味で本書は、これまでとは趣の違う作りになっている。(堤 昌司)