全3章の前半では、組織をだめにするリーダーと組織を繁栄させるリーダーに、どんな特質があるのかを列挙している。たとえば、前者のリーダーでは「攻撃性をむきだしにする」「ねたみ心をはげしく燃やす」「相手の譲歩につけこむ」「規則をふりかざす」「徒党を組んで支配したがる」などを、後者のリーダーでは「権力が夢を実現する手段である」「何かを築こうとする」「創りあげた人に敬意を払う」「人を敵味方に分けて考えない」「資質や能力を公平に評価する」などを挙げている。
著者はこうしたキーワードを、過去から現在までの古今東西のさまざまなリーダーに重ね合わせたり、政治、ビジネス、宗教、文化、芸術などのあらゆる分野のエピソードから読み解いたりして、奥行きのあるリーダー論にふくらませている。権力を握ることで浮き彫りになるというリーダーの善悪の資質に、著者は迫ろうとしているのだ。
また、後半ではリーダーのあるべき姿として、「目標と夢を分かちあう」「人材を最大限に活かす」「もてる力を発揮する」「資質と人間性を活かす」の4つの点を挙げている。人の見抜き方、部下とのかかわり方、戦略の立て方、変化への対応といったテーマを、具体的にわかりやすく説き明かした、貴重な1冊といえるだろう。(棚上 勉)