25年以上前にNHKで曜変天目を再現することに没頭している科学者の姿が放送されたのを見ました。当時、物理学科の学生だった私は、科学者とはここまでやる人のことだとこわくなったのを憶えています。その科学者は、その後も同様のペースで研究を続け、納得のいく碗を創造(再現ではなく)し、その成果がまとめられたのが、この本です。 第一部研究の経緯では、実際のアプローチが示されています。詳細データはないものの、自分流の曜変天目を作ろうと思えば、必読書です。この科学者の高度な科学的思考力と実践力は、曜変天目以外に取り組んでいる者にとっても、参考になります。
第2部曜変天目茶碗写真集もすばらしいです。それぞれの碗が、独特の光を放っています。私の一番のお気に入りは、寂光です。
安藤堅氏の個展が再度開かれ、”碗の中の宇宙”を実物から感じられる日が来ることを、切望します。