漠然とした安全、安心は危ないというコト
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私は農業を営んでいますが、昨今の有機農産物で安全、安心の付加価値を高めようとする動きには違和感を覚えています。
現在はJAS有機と認定されているもの以外は、有機栽培とは認められなくなりました。しかしJASの認定基準を確認していただければ理解していただけるはずなのですが、JAS有機ですら安全、食味の良さ、環境へ悪影響について慣行栽培より優れているという明確な基準はありません。
最も気になるのは使用できる堆肥の成分について明確な基準がないことです。
成分の内容によって人の口に入るものとして有益に働くこともあれば、そうでないものも当然あります。
そもそも、有機物は安全、対して化学肥料は安全ではないということ自体、事実無根です。
有機物も結局は無機イオンに分解されてから植物に吸収されます。
チッソ分があっても1年以内にその数パーセントしか無機化しない堆肥も売られています。
施肥技術で大切なのは植物が必要とするときに必要な栄養分を補給すること、そして植物に有害な成分を吸収させないことです。
これにかなうのであれば、有機物資材、無機物資材に有意差はありません。
「有機だから・・安全」というのは漠然としたイメージに過ぎないということです。
安全な農産物とは、農薬のポジティブリストの基準を遵守しているもの、重金属が基準値を満たしているもの、硝酸態チッソ量が基準値を満たしているものといった明確な証明がなければならないのです。
おいしい農産物も食味値、糖度の数値が優れているとはっきりわかるものでなければならないはずです。
ただ、残念ながらこのような明確な安全、おいしさを情報公開する制度が不十分なのも事実です。
私たち生産者は明確に安全で、明確に食味の良い農産物を低コストで生産する技術の向上に努めると同時に情報公開制度の構築にも努めて生きます。