正に驚異的なパフォーマンス
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もちろん、いきなりインド音楽へのアプローチが私の前に開けていたわけではなく、そもそもはビートルズのジョージ・ハリソンであった。この人がグループ解散後に「バングラデシュのコンサート」なるものを開催し、その映画が公開され、アルバムが発売された。ラヴィ・シャンカールの演奏するインド音楽は映画にも「付いて」きたし、アルバムにも「付いて」きた。そうして徐々にシャンカールの弾く煌めくようなシタールの音に惹かれはじめたのである。(同じアプローチを辿った人も多いに違いない。)
そんなところに映画「モンタレー・ポップ・フェスティバル」の映像である。
映画のトリとして映し出された映像もその音響もひどく粗いものであったが、シャンカールとアラ・ラカ(タブラという大小二つのドラムの奏者)のやり取りは正に驚異的で、観客席の若者達は演奏終了と同時に総立ちになって拍手喝采し、"One more" "One more"と叫ぶ。(そこにあるのはすでに一人の民族音楽家ではなく、世界を舞台に自立した孤高のアーティストの姿にほかならない。)
このCDはその時のパフォーマンスを収録してある。1曲目はシタールのソロで、27分ほど。インド音楽が十分に堪能出来る演奏である。2曲目はアラ・ラカによるタブラのソロ。そして3曲目が映画「モンタレー〜」で観られる演奏で、20分近くに及び、後半部でシタールとタブラの、まるで一騎打ちのような掛け合いが聴かれる。
もし貴方が、インド音楽というよりも、シタール奏者ラヴィ・シャンカールに関心があり、初めて聴くCDがこのライブ・アルバムならば、幸運と言うべきかもしれない。そしてもし貴方が、このアルバムを聴くより先に映画「モンタレー・ポップ・フェスティバル」を観たなら、もっと幸運に違いない。「驚異的」という言葉は、視覚を伴ってこそ説得力をもつのだから。