他に誰も居なければ とりあえず私が書いてしまいますけど、もっと適切なレビューを誰かが追加してくれる事を期待しちゃいます。
この本では、導入部の1,2,3、4章でおおまかな概要を(くどいくらいに例題を交えながら)説明し、第5章で具体的な回路イメージと構造解説をしたあと いかにも米国流らしく、次の第6章でいきなりパイプライン化した累算器の設計の実例を研修するようになっています。
第7章以降でサブ・プログラムやパッケージ、エイリアスの解説をした後、すぐに実例研修としてビット・ベクターの算術パッケージをとおして、全体的な記述を簡潔かつ「読める」水準にまとめる事 を学ぶように工夫されています。
初心者が困惑する事の多い Resolved Signal の取り扱いは、第11章になってからようやく本格的な解説を行うよう工夫されていて、なるほどなあ・・・と感心するような気配りです。
第13章でのComponentとConfigurationについての実に丁寧な解説の中には、普通、あまり馴染みが無い使い方では?・・と思うようなやりかた(Configuration をアーキテクチャ記述の先頭部分に書いてしまう)も紹介されています。
第14章 Generate では、単に Generate 文それのみを単独に取り上げて解説しているのではなく、ここまでの過程を振り返りながら Configuration との関連までを含めての解説している点など、ほかの類書は殆どみられない 気配りの良さ つまり実務を知っている著者の力量を感じさせます。
第15章での「DLXコンピュータ」ケース・スタディは、特に章末の問題集に挑戦してみることで、読者にある種の達成感を与えてくれます。
第16章のガード・ブロック文の解説は、実際のコンパイラが必ずしもこの規約を実装してはいないので 私の場合は読み飛ばしました。
仕上げ部、第17章以降は主にテスト・ベンチなどでの記述に必須の知識を解説し、アクセス・タイプなどの型とテキスト・I/O について触れています。 実際の設計作業で必要な知識は、この第18章まででも十分と言えるのではないかと思います。
第19章は、設計したターゲットのパーフォーマンス解析の例をとおして、HDLでの設計というパラダイムの奥の深さを感じさせてくれる部分ですので、巻末付録部にある「合成」に関する覚書とともに、習熟した設計者にも一読の価値があるのではないかと思います。
本書の章末問題にはすべて解答が与えられていますので、独習者にも十分、価値のあるテキストになっています。
( numeric_stdに関する記述としては、そのドラフト案に関する簡単なノートしか与えられていません。 本書の出版時期の早さから当然の結果ではありますが、少し残念 )