アート・ペッパー没後30周年記念企画第二弾作品
1981年5月にイタリア・ミラノのクラブで行なわれたライヴ音源だが、このアルバムに関して特筆すべきことは、アート・ペッパーが長いジャズ人生の中で唯一持ったレギュラー・グループによる録音であるということ。そして、このカルテットによるスタジオ録音は残されておらず、とても貴重な録音であるということ。
収録されている5曲も、自身の経験から来るのだろう、ドラッグでハイになった状態を表現した「ザ・トリップ」。自身が所有していた真っ赤な車から名付けた「レッド・カー」。妻ローリーに捧げた「マイ・ローリー」。プライベートで親交が深かったベーシストのジョン・ハードについて書いた「ブルース・フォー・ハード」。サンバのリズムとタイトルも面白い「サンバ・モン・モン」という全てオリジナル楽曲で、アート自身にまつわるナンバーが並んでいることも興味深い。この録音の約1年後にこの世を去るアートの晩年の快作のひとつ。(加瀬正之)