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海の御先 8 (ジェッツコミックス)

価格: ¥303
カテゴリ: コミック
ブランド: 白泉社
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人と自然を飾らぬ眼でみたい ★★★★★
 相変わらず凄い情景描写。視覚だけで感じる筈の本から、波に照り返す蒼月の冷たさ、その光を運ぶ潮の音、未だ昼の熱をはらむ夜の浜辺できしむ砂、そして目の前にいるそよぎの吐息と体の熱さ。こういう物が目ではなく頭のなかに、或いは心そのものに直に伝わるような。
 
 前巻から通して三人の巫女達が自分の気持ちを自覚し、それに龍神が応えていくさまが彼女たちの気持ちも露わに描かれています。現代的な目で見れば優柔不断のそしりは免れませんが、ここは奥津の神の生きている島。人と神が私達の想像するよりもずっと近く、命を自然からもらって(うちは田舎だ。島ではないが結構そういう風に思えるぞ!?)生きている所です。
 人としての面と神としての一面を併せ持つ様になった彼のこと、きっと読者の考えなぞ知らぬ存ぜぬと自分の考えを貫く事でしょう。

 そんな日々の中、ある夜、凪の腕にいだかれている火凛。星降る様な空の下、障子の向こうで潮騒が鳴り、他の二人の寝息こもる部屋の中。布団が、夜着が衣擦れの音をたて、甘い吐息が洩れ聞こえ、更に隠されているはずの彼女の心までが私達の前にさらけ出される。こんなんを想像してみて下さい。そしてもし気になるひとは...
        
                 八巻を読んでみましょう。
複数ヒロイン格によるラブコメの王道 ★★★★☆
「藍より青し」の大ヒットで絶大な知名度を得た文月晃氏の新作も順調に第8集に至り、文月氏独特のストーリーアンフォルドによって、タイトルである“海の御先”として、見事な世界観を醸成させている。「藍より青し」のアビリティを基本的に蹈襲しながらも、主人公である後藤凪に関する複数のヒロインによる関係形成(ハレム)は前作よりも大幅に強くなった。
文月氏の特筆大書は、安穏たるアトモスフィアの中にあって、均一的な対複数ヒロイン格への配慮が成す、漠然たる関係構築(要するに、いずれがメインヒロインかを明確にしない)にある。基本的に純愛に徹した「藍より青し」をより昇華させ、青年誌の限界に挑戦するかのような表現の導入は率直に評価出来る。
三人のヒロイン格を設定し、その個々に対する主人公の対応を不条理・ヘタレと評価する向きもあるのだが、“海の御先”に限らず、一般論として現実に置き換えた時、ハレムの状態から自らを特定のヒロインに決するというプロセスは早早容易ではないだろうと思う訳である。
ストーリーコンセプトが「龍神の存在」ということであり、舞台自体がそれを基軸にあるとするのならば、個人的感情では批判だけではなく、安易な同調もし難い。個々の話数自体が緩やかな流れなので、個別の評価がしにくい作品であるとも言える。