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Europe: A History

価格: ¥3,212
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Pimlico
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途方もない大著が4巻本として日本の読者に送られた。ヨーロッパの歴史を詳しく、幅広く、そして実におもしろく描いた作品『Europe: A History』の邦訳が、1年あまりで我々の前に並べられたのである。まずもって訳者の労を多としなければならないし、その労にふさわしくまことに見事な翻訳である。それにしてもこの書物のスケールの大きさには恐れ入るしかないし、目配りが行き届いていること、これまた驚嘆するしかない。ヨーロッパの成立に始まり、転変ただならぬこの世界を時間の流れに沿って描くだけでも気の遠くなるようなものだが、それを著者の専門である東欧圏への目配りを十分行いつつ書いていくのだから、地理的な広がりという点からも類書は見出せないと言えるものだ。普通こうしたスケールの本となれば、重要な史実を網羅して、しかし時に事実の羅列が読者を倦(う)ませる危険があるものだが、本書にはそうした懸念は無用である。なにしろやたらとおもしろいエピソードが満載で、本文で足りないとなると、「カプセル」と名づけられたコラムでさらに次々と追加が行われる。ご用とお急ぎの方は、このコラムだけを拾い読みしてもいい。とはいうものの、本書の醍醐味は長きにわたるヨーロッパの歴史のうねりを縦横無尽に描き出す、いわば歴史絵巻のごとき筆致にあるわけで、それを味わうにはじっくりと最初から読んでいくに勝るものはない。そしてその歴史のうねりとともに、もうひとつ大きな魅力は登場する人物たちの個性あふれる姿であって、1000年前のヨーロッパの辺境に住む人間が、まるでつい昨日会った人物であるかのごとく感じられてしまうのだ。その最大の理由は、やはり著者の文章にあるのだろう。何しろデイヴィスは、どんなに偉い人間を描いても、あるいはどんなに悲惨なできごとを描いても、常に冗談を忘れないのである。日本史もこういう風に描いてほしいものだ。(小林章夫)