Yeah It's That Easy
価格: ¥2,036
ラヴ・アンド・スペシャル・ソースがそのデビューアルバムをリリースしたのと同じ1974年に、ベックもフォークブルースのルーツとルーズなラップをブレンドした同じようなスタイルでメジャーレーベル・デビューを果たしていた。ベックの美学とその商業的成功にはおよばないものの、ラヴはこのスタイルを面白いやり方で磨き続け、1997年に、そのベストアルバム『Yeah, It's That Easy』を発表した。ベック同様、ラヴもまた、ポップの楽しさを古(いにしえ)のルーツとヒップホップの実験のつぎはぎの中に輝かせているときにこそ本領を発揮する。たとえばこのアルバムはStepping Stoneという曲で始まるが、これはモチーフはブルースで、路上生活者のビートに乗せているが、魅力あふれるコーラス部分に達したところが一番の聞かせどころだ。『Yeah, It's That Easy』は、警察を支持し反ギャングを唱えるという一風変わったヒップホップアルバムだが、わざわざ(バスケットボール選手の)ラリー・バードをおちょくってまでいる。ラヴの少年時代のバスケットボールチーム、ザ・フィラデルフィア・セブンティナイナーズについてのファンキーな曲目I-76の中でからかっているのだ。これより説得力に欠けるものとしては、タイトル曲のような口の中でもごもご言っている単調なラップ曲などがある。ただ、路上生活の犠牲者への哀歌Lay Down the Lawでやったように、ヒップホップのビートとブルースギターのリック、それにポップの聞かせどころを集めてこそ、ラヴはデビュー時の宣伝文句を叶えられるのだ。 --Geoffrey Himes