中央銀行総裁たちの世界恐慌史
★★★★☆
第一次世界大戦から世界恐慌に至るまでの英、仏、独、米の経済史を4人の中央銀行総裁の葛藤を通して描きます。ドイツを賠償金漬けにしたパリ講和条約の政治の失敗。中央銀行の使命・役割が現在のように明確に認識されず重要なポストに必要な権限が与えられず最適の人材が登用されなかった不幸。金本位制度から抜け出せなかった知力、想像力の欠如。中央銀行総裁を政治家との対立、国益の対立、立場の違いを超えた交流、私的生活から生身の人間として描き、歴史の脆弱さを伝えます。ビジネス書としても歴史書としても面白い内容になっています。第二次世界大戦後の経済成長を支えたBretton woods体制、Keynesの功績に感謝せずにはいられません。インフレは貯蓄者、債権者、賃金労働者から政府、債務者、企業への富の移転であり、デフレの負担は労働者、企業、債務者に厳しく、通貨切り下げの負担は債権者に掛かる。Keynesの本質的な指摘はいつの時代にも当てはまるのでしょうが、日本の政策議論ではあまり議論されることがありませんね。