本書の読みどころは、ウォルマートの創業者であるサム・ウォルトンの“色”を残しつつ、新経営陣がいかにロジスティックスの整備やグローバル戦略などに関する決断を行ってきたかという点にある。小さな組織だからこそ生きる経営から大きな組織に見合った経営への切り替えに失敗する企業も多いなか、ウォルマートは、時にかなった経営改革を次々と行ってきた。また、組織が拡大していく一方で、積極的に下部組織に権限を委譲していくことにより、創業者が残したアットホームな企業文化を末端にまで浸透させようと試みている点も注目に値する。
さらにある程度の成長後は、その進出のあおりを受けて倒産した小規模企業のオーナーからの抗議や、スキャンダル好きなマスコミに頭を悩ますことも増えてきた。そんななかで新経営陣たちがとったリーダーシップは、成長のセカンドステージに入ったすべての企業にとって、大いに参考になるだろう。
本書は、成長途上の企業の経営陣、特に、強いカリスマを持っていた創業者の後を継ぐ経営陣に一読をすすめたい内容となっている。守りと発展のバランスをうまく取ることができたウォルマートから、学ぶべきことは多いはずだ。(朝倉真弓)