ファンでありながら、DVDになるのをずっと待っていたので、はじめて見ました。完全版だそうです。映像は手持ちカメラによるものが多く、ライヴは、大雨のなか、夕方から夜にかけて強行されたので、ひとつひとつの場面が変化に富みます。たしか、レコード会社は費用を負担しないと返答したなか、U2が自己負担で開催、製作しました。少年／アイルランド三部作『ボーイ』『アイリッシュ・オクトーバー』『WAR（闘）』から演奏されるセットリストもそうなんですが、このライヴ映像は、すべてにおいて、自分たちを犠牲にしても、レコード会社の援助がなくても、異国アメリカで得たファンのために尽くす彼らの無垢を証す作品でしょう。たしかこのライヴ盤が最初にミニ・アルバムで出た時は、ファンのために、メンバーの印税の取り分を下げて、値段を安くしたはずです。
とくに90年代以降のU2のツアーと比べると、四人の生身の演奏だけで作られたライヴです。しかし、ステージの背景に、少年が怒りの表情を浮かべた『WAR（闘）』の巨大ジャケット写真を飾り、そして「サンデイ・ブラッディ・サンデイ」では、ボノが白い旗を立て、「世界に必要なのは白い旗だけだ」と語る、というような彼らのパフォーマティヴな演出は、このころのツアーから現在のツアーに至るまで形を変えてずっと続いていることが実感できます。
コメンタリーでは、監督がいろいろ説明してくれています。
ライヴ盤のほうは、レッドロックスからの収録曲は、天候が落ち着いたころに録音された二曲のみで、あとはヨーロッパでのライヴ録音が使用されています。
ジャケット、ブックレットは、ハードカヴァー写真集になっています。

83年収録の映像で元々の映像に起因する映像の不具合はあるものの、内容としては最高でした。今の横綱の風格漂うU2ではなく、若さや情熱が前面に出てくるステージです。U2ファンならずともこれは絶対に買いの1枚だと思います。