著者は、差別語糾弾運動を「ことばのよし悪しを決める権利を非エリートが、言語エリートから、部分的にでも奪取しようとする動き」として支援する一方で、言語の広がりと深みによりつつ、その限界を指摘し、新しい方向性をさぐります。
「○○用語集」や「××マニュアル本」の類にはない、ことばの本質に肉薄するおもしろさが本書にはあります。私のような初心者にとっては5つ星です。
著者自身も書いておられることですが、言葉の意味は外部条件によって決められるところがたくさんあって、純粋に言語の内部だけでその言葉の意味について考えられる、というのはいわばレアケースです。その意味で、差別語への言語学的アプローチたるこの本は、喩えていえば寿司屋で醤油の講釈を聞かされたようなものだ、と言えば言い過ぎでしょうか。なるほど、と勉強になったところも多いのですが、総じて言えば、差別語をめぐる激烈な現状に対してインパクトがあるとは思えませんでした。