日本でロックをやることの意味を問いつつ、青春時代の心の揺れを描く秀作
★★★★★
ロックの価値とは自分らしくあること、じゃあ自分って何だ?という自分探しの日々を描く。モラトリアムの時期を過ごした私のような者にとって胸かきむしられる思いがする。
中産階級に生まれ育ち、不幸なことに不幸がなかった、ディランのように旅に出る必然もなかった、というコンプレックスに主人公・中島はどうケリをつけたか。もがいた末の結論は観てのお楽しみとして、映画で披露される音楽はレベルが高い。中島役の峯田和伸はもちろん、中村獅童のヴォーカルも堂々たるもの。中島を病床で励ます場面の獅童は最高だ。
麻生久美子が素晴らしい。「君らしく生きようとする君自身のファン」に向かって中島が歌う場面が印象深い。その他、主人公達を見守る三上寛等、神様・ディランのハーモニカの妙技等、脇もしっかり固めてある。
ディランのファンだと、アルバムBringing It All Back Homeの本作への投影、散りばめられた歌詞、ラストワルツのディランのように歌えたという台詞に一層共感できる。
本エディションのオーディオ・コメンタリーは監督、峯田、みうらじゅんによる鼎談で聞き逃せない。
これは傑作!
★★★★★
あるバンドの成功と挫折を描いている物語です。
主人公(峯田和伸(銀杏BOYZ))の本物のROCKを求めて葛藤する姿は胸を打ちます。
彼の歌うシーンは、さすがに本職だなと感じさせる程、真に迫ってます。
目がいっちゃてます。
中村獅童演じるバンドのメンバーも面白く、印象的なキャラです。
獅童は本当にいい役者だな、と思います。(スキャンダルが多過ぎですが・・・)
ヒロイン役の麻生久美子の演じる気位の高い女性も魅力的です。
下手をすると高慢な女になってしまいそうですが、そうならずに上手く演じています。
売れる音楽と自分たちの本当にやりたい音楽(ROCK)との間でゆれるバンド、
というのは昔は多かったですが、最近は少ないように感じます。
二つを上手くミックスし、消化している器用な人たちが増えていると思われます。
そんな現状を踏まえてこの作品をみると、不器用な人たちだなぁと、
もどかしく思う半面、なんとも言えない魅力を感じて心惹かれてしまうのです。
変わらない!
★★★★★
どうしてそんなに器用に生きられる?
俺にゃ無理だ。
「大人になれよ」と言われようとも。
「メリケンサック」にも通じるところの多いクドカン脚本作品。
★★★☆☆
みうらじゅん×田口トモロヲ×クドカンのコンビで、熱きロック魂を表現した本作は、大ブームになった「イカ天」などへのアンチテーゼでもある。2003年度の公開作品なのに、なぜこうも画質が悪いのか疑問だが(笑)、けっこう真面目にロックを語っていて好感である。クドカンは6年後に「少年メリケンサック」を撮るが、これはその前日談とでもいえようか。正直、作風は万人受けするスタイルではなく、ジェットコースター型のクドカン脚本を想像すると面食らうかもしれない。ボブ・ディランの「魂」が理解できない人には辛いかも・・・。自分もちょっとノリ切れなかったので、星3つ。出演者は豪華で、浅野忠信まで出てる!3秒くらいしか出てこないので、探してください(笑)。また2枚組を購入しないと、音声解説も特典映像もないのが寂しいなあ。せめて音声解説だけでも欲しかった。
ATGのようなロッックな映画
★★★★☆
この映画を観た若い人たちは、ロックやバンドに取り組む青春時代の心の苦悩や魂の爆発に、
きっと共感しただろう。私はこの映画の持つエネルギー自身にある種のレジェンドを感じた。
田口トモロヲ・みうらじゅん・宮藤官九郎という当代きってのタレントが絶妙なコード進行で
ラストのボブディランに集結していく。まさにかつてのATGのようなロックな映画である。
バンドを医学生に置き換えると「ヒポクラテスたち」だ。麻生久美子は秋吉久美子なのだ。
邦画の復権が数年前から語られるようになったが、それは以前の立ち位置に戻るのではなく、
例えばTVドラマとのコラボレーションといった形で、新しい需要を獲得することであった。
それはそれで良いのだが、昔ながらの邦画ファンにとっては、一抹の寂しさが残っていた。
この映画は、私をATGのようなエネルギーを含んだ邦画の世界に戻してくれたのである。
峯田和伸もすごくいい。同様に青春に悩みながら「パッチギ!」の主役からは感じなかった
音楽への熱い思いを溢れさせている(当然といえば当然なのだが)。田口トモロヲ監督が、
インタビュー(※)で「礼儀正しいので、峯田を使って良かった」というのが面白かった。
「舞妓Haaaan!!!」の阿部サダヲのように、クドカン映画は主役のサプライズ要注意である。
※但し、このDVDは本編ディスクのみ