②個々の戦術が優れていたこと。日本軍は、一般的に強引に押すときは無理を承知でも攻撃し、じっくり待つときは一転して持久戦に入る、臨機応変の戦術を展開。例えば、黒木大将の戦術はここぞというときには間髪入れずに実施され、これが敵をして一歩か、二歩後手を踏ませる原因となった例があげられています。黒木は膠着状態になると昼寝をしていた(いくら優れた戦術でもいつも思い通りにはならない)エピソードや東郷が白旗を掲げても機関停止しない艦艇には容赦なく攻撃を継続した、といった点は戦術のメリハリを感じさせます。
読み物としては面白いのですが、いまひとつ議論が深まっていないのが、欠点といえば欠点です。
これに先立つ日清戦争とその後の第一次世界大戦というようにかつての日本はちょうど十年ごとに大規模な戦争を戦いアジア地域に後発の資本主義国として植民地を増やしていくのだが、その結果がおびただしい犠牲を伴った先の大戦の大敗北へつながってゆくのは周知のとおり。
三十年年前にこの本が出版されたら非難の十字砲火を浴びたのではないか、まさに隔世の感がある。戦争も百年たてば何らかの形でかかわった人々も殆ど存命していない。太平洋戦争、大東亜戦争、十五年戦争...四十年後(多分死んでます)がどのような呼称となっているかは分からないが、かつての歴史をどのように評価するかで今の時代の動きが分かるとしたら....