追悼・谷 啓
★★★★★
2010年9月。谷 啓が不慮のアクシデントでハナ肇や植木等達の後を追ってしまった。なんとも悲しい限りだけど、この作品があれば生きていける。若かりし時代の作品は時代に寄り添っているだけに若干のノスタルジアがつきまとうが、この地味だけど滋味があるこの作品は私にも心に響いた。今と違い終身雇用だった時代、会社を退職する事は人生の終わりを意味していた。だからハナ肇演ずる主人公が定年を間近にして揺れ動く様が胸を打つし、クレイジーキャッツの面々が最後に一同に会し、ジャズをやるのが涙を誘う。昔、この映画のCMで植木等が『この日本は俺達が作ったんだ!』と叫んでいたのが今も頭に残っている。戦後の日本を支えた世代が定年で門前払いされる事に対する世間へのカウンターに私には聞こえてならなかった。
もうあの絶妙なトロンボーンの音色を聴けないかと思うと涙が止まらない。
谷 啓さん、本当にお疲れ様でした。天国でセッション楽しんでくださいね。