スリリングな「女らしさ」の戦略を克明に描く
★★★☆☆
内容は、社会学という学問のものだが、扱う題材が「外務省機密漏洩事件」という一世を風靡したスキャンダルだったため、サスペンスを読むような感覚で読める本であった。「外務省機密漏洩事件」は、結局は男女の「情事」にすりかえられてしまったが、そこに被疑者の女性の「女らしさ」の戦略があったというもの。女性の生い立ちから、心理状態などから、新聞記者である男性に対する感情の変化などをたどっていく方法は、まさにサスペンスとして読める。
社会的に圧倒的に優位に立つ一流新聞の新聞記者と、高卒で寂しい生い立ち、夫との冷えた仲に生きる女性の人生が交差したところに生まれる「愛情」の感覚の違い、生きる現実の違いが「機密漏洩事件」を「男女の情事」にすり替えていったのだと思わせる。