デペッシュ・モードのフロントマン、デイヴ・ガーンのソロ・デビュー・アルバム。出るぞ出るぞと長い間いわれ続けていただけに、あれこれとアイデアをぎゅう詰めにしたアルバムだろうと思いたくもなる。何しろガーンは、ヴィンス・クラークやマーティン・ゴアのつくった曲を歌わなければならない立場にあったうえ、自分の曲はお蔵入りにされてきたからだ。しかし『Paper Monsters』は、解放感にまかせて暴れまわったという作品ではない。これらの曲からは、まるで短期間のうちに書き上げられたかのような印象を受ける。録音を見送られたチューン20年ぶんの中から引っ張り出してきたようにはとても思えない。

   トラックは基本的に3つのタイプに分類できる。まず、デペッシュ・スタイルのパワフルなグラム・ロック（「Dirty Sticky Floors」、「Bottle Living」）。それから、静かで都会的なムード・ミュージック（「A Little Piece」、「Bitter Apple」、「Stay」）。そして、とどろくようなインダストリアルなトラックだ（「Black and Blue Again」、「Hidden Houses」、「Goodbye」）。歌詞は自伝的な内容で、ガーンが人間関係やアルコールで起こしたトラブルを扱っている。ここにはガーンらしいドラマティックでひねくれたセンスはないが、思わずもらい泣きしてしまいそうな魅力がある。（Dominic Wills, Amazon.com）